ADHDを漢字で書くと注意欠陥多動性障害です。
この多動性という部分だけが一人歩きしてしまい、
ADHDの人は動き回るだけなんだと思っている人が多いのいですが、
実はADHDには「不注意」「注意力散漫」「過集中」「姿勢の悪さ」だったり、
多動という「動き回る」「落ち着きがない」という症状以外も多数存在します。
今回は僕自身が抱えているADHDの特徴でもある「姿勢が悪い」ということ、
さらに姿勢が悪い時のほうが実は集中しているということについて解説していきたいと思います。
目次
ADHDの姿勢の悪さは本人の中ではあくまで普通の状態
日本では「姿勢が悪い=態度が悪い=やる気がない」となることが多いです。
日本では実力よりも「自分によくしてくれる部下」だったり、
「挨拶をちゃんとするやつ」など本来の実力と関係がないところで評価される文化です。
もちろん全ての会社がそうではないとは思いますがそのような会社が多いのは事実。
ADHDの姿勢の悪さは時として学生生活や社会人生活で悪い評価を受けることがあります。
しかしADHDの僕からしたら姿勢の悪さは「普通」の状態であり、
「相手を舐めている」わけでもなく「やる気がない」わけでもありません。
ADHDの姿勢の悪さはスパゲッティの食べ方と同じ理論
ADHDの姿勢の悪さを健常者の方に理解してもらうのは非常に難しいのですが、
わかりやすい例としてスパゲッティの食べ方があります。
スパゲッティの食べ方は大まかに分けると、
フォークだけで食べる方、フォークにスプーンを足して食べる方、箸で食べる方がいると思います。
どの食べる方もマナー違反はあるかもしれませんがスパゲッティを食べることはできまよね?
ADHDの姿勢の悪さも実はスパゲッティの食べ方と全く同じことが言えます。
姿勢が悪くても先生の話や上司の話はちゃんと聞けているということです。
もちろんADHDの方は集中力が長続きしないので話を長く聞けないことはあります。
しかし、それは話が長いことに問題があるだけで姿勢の悪さは関係ありません。
むしろ発達障害の人は興味があることだと
「過集中」といわれる健常者以上の能力を発揮することもあります。
ADHDは姿勢が悪い時のほうが集中していることがある
ADHDの姿勢の悪さは「普通」なことだと前述しました。
場合によるのですが姿勢が悪い「普通」の時のほうが実はリラックスしていることが多く、
実は物事に集中できていることがあります。
健常者の人からしたら体をぐにゃっとさせてる状態は
「やる気ないんです私」をアピールしているように見えるかもしれません。
しかし実際はシャンと真っ直ぐ背筋を伸ばしていることのほうが辛いADHDにとっては、
どこかに体重をかけてぐにゃっとして座っている体制のほうがリラックスできている状態なのです。
ADHDは姿勢の悪さを意識して直していると何も手につかなくなる
健常者の人からしたら「ただ座る」ことに意識なんてしたことがないかもしれません。
しかしADHDからしたら真っ直ぐ座っているというのは一つの「意識した行為」に入ります。
ADHDの人はマルチタスクができません。
もしも好きな格好でリラックスして授業を聞かせてくれるなら、
やることは一つ「授業を聞く」これだけです。
しかし先生に「おい!なんだその姿勢はきちっと座れ!」と言われたらどうでしょうか?
意識して骨盤と背骨を立ててお腹周りに力を入れて座っていないといけません。
すると「お腹周りに力を入れて座ること」と「授業を聞くこと」とタスクが二つになりました。
ADHDにとってこの二つののタスクの場合どちらが大変かというと座ることです。
授業は幸い聞き流していても勝手に進んでいきますが、
座るという行為はずっと意識していないとすぐに姿勢が崩れます。
だから「常に」意識がお腹周りや姿勢に行ってしまうので授業の内容は頭に入ってきません。
頭の中は「早く授業終わらないかな」で一杯になってしまうのです。
社会人の場合はこれが「早く会議終わってくれないかな」に変わるだけです。
ADHDの姿勢が悪いと困ることはあるのだろうか?
人間というのは固定概念があるとそれが普通だと感じてしまう生き物です。
僕は社会人のスタートが接客業だったので、
会社の出勤5分前には身なりを整えて朝礼時間にはピッタリ集まり「接客七大用語」を大声で言う、
遅刻してきたらみんなの前で「遅刻してすみませんでしたと謝る」これが普通だと思ってました。
しかしIT系のホワイト企業に入社した時にとても驚きました。
まず朝礼がありません、出社するのはPASMOと連携した退勤管理システムがあり、
万が一遅刻しても自分の給料が下がるだけで上司から怒られることはありません。
服装は私服で客先に訪問するときだけスーツで行けばいいというルールで、
夏には半ズボンにサンダルで仕事をしている人もいました。
ランチタイムもみんなが同じ時間に食事に行くのではなく各自が一時間休憩するだけです。
僕はIT系の会社で働いて知ったのが「仕事ができてれば何でもいいんだ」ということでした。
これはADHDの姿勢が悪いことにも当てはまると思います。
例えばぐにゃっとした姿勢で授業を聞いていないように見える生徒のテストが100点で、
シャンとした姿勢で授業を聞いているように見える生徒のテストが30点だったら、
偉いのはどちらでしょうか?確実に前者だと思います。
また会議の時深く腰掛けてだらけて聞いている社員の営業成績がトップで、
ちゃんと会議をくまなく聞いている社員の営業成績が0件だったら、
会社としてはどちらがありがたいでしょうか?
これらのことから「姿勢」や「態度」というのは学業や仕事とあまり関係がないように思えます。
ADHDで姿勢悪いと常に腰痛持ちになるがこれは避けられない
ADHDで姿勢悪いと授業を聞いたり仕事の出来栄えには全く問題がないのですが、
人間というのは重力に逆らて生きています。
体というのは上から下にくる体の重さをS字の背骨で吸収しています。
しかしADHDの背骨はぐにゃっとしているので体の重さを分散することができません。
必然的にその代償は腰の負担となって現れます。
筋肉が多い若い時ならいいかもしれませんが歳を取ると体にガタが必ずくるでしょう。
そうならないためにも姿勢の悪さを完全に治すことはできなくても改善する努力をしましょう。
僕は毎日ジムに通いヨガにも通っています。
体の癖というのは中々直らないものですが何もしないよりはしたほうがいいのは明らかです。
ADHDが過集中になる過程で姿勢が悪くなるのは五郎丸選手と同じ理論
ADHDに限らず発達障害の人は好きなことや夢中なことがあると「過集中」という、
健常者の人からしたら考えられない集中力を発揮することもあります。
過集中とは健常者の人がいうスポーツの「ゾーン」のような状態です。
五郎丸ポーズで一世を風靡したラグビー選手の五郎丸選手。
彼がキッカーとしてボールを蹴る前にしていた忍者のようなポーズ。
一見普通の人からしたら「蹴るのに何の意味があるの?」と思うかもしれません。
しかし五郎丸選手の中ではあのポーズをルーティーンとして取り入れることで、
「ゾーン」つまり集中状態に入りやすく自分を導いていました。
個人的にはADHDの姿勢の悪さも五郎丸選手のニンジャのようなポーズと同じだと考えています。
一見他人から見たら「その恰好やりにくくない?」という姿勢が実は集中しやすかったりします。
ちなみにADHDの姿勢の悪さは改善はできても完全になることはないと思っています。
改善方法は以下の記事に書いたのでどうぞ。
【発達障害者は姿勢が悪い】大人になっても間に合う対策方法とは?
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最後に
自分のお子さんや生徒さんでADHDの子供がいたとして、
見た目だけであいつはやる気がないと叱ってしまうと「座っているだけでいつも怒られる」と思い、
勉強は好きなのに勉強をするこで怒られるなら、
いっそのこと勉強を辞めてしまおうと思う子供もいるかもしれません。
これからは多様性の時代です、
色んな人価値観の人間が相手を認め合ってこそいい世界が作られると僕は考えています。
どうかADHDで姿勢が悪い人がいたとしてもそれだけで「やる気がない」「なまけている」
と判断していただきたくないとADHDの当事者としては強く願っています。